インクナブラ

 主に創作小説を掲載します。

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家族のイデア・2 

 切ない……この気持ち……。こう、何? 今日と明日は自分にちょっと贅沢を許していいよね……というようなハートほとばしる。イブ、これがクリスマスイブ。

 と、言うほど気持ちに変化はなかったりする。余計ダメ。

 まあ、何か予定ある人は防寒を万全にしてイベントを謳歌するとよろし。

 まだ別にヤマのない家族のイデア、二話目。
 内容は特に時節と関係ありませんので悪しからず。



2.





「魔女、ねえ」

 『胡散臭い』という本音がにじみそうな顔でその単語を反復する先生に、僕は頷いてみせる。

「あほらしいとは僕だって思ってますよ。でもべつに否定する理由も無いし、なんかイメージの強い名前でしょ、『魔女』って。だから妙に定着して、そのまま使ってるんです」
「ま、自分の母親を指して言うにはインパクト抜群の言葉よね。|魔女《ウィッチ》|。|扉の中の魔女《ウィッチ・オンザロック》|。格好良い。カクテルっぽい」
「それはどうかと思いますが」

 どうにか初めて二人きりでこなす授業を終えて、僕たちは定番の雑談に入っている。『初めて』なのになぜ『定番』なのかといえば、それは妹が先生との授業をもっぱら僕の部屋で行っていたせいだ。それも「あの人と二人きりはいやなんです」というふざけた理由で。受験前の僕にとってそのワガママはいい迷惑だったが、邪険にすることもできずにいる内に、妹の授業は僕を含めた三人で行われるのが当然のような状態になっていた。だから今は妹こそいないものの、先生と世間話をすることに関しては僕も慣れているというわけだ。

 とはいえその『授業』も妹の高校合格を機に終わりを迎えるはずだったのだが、突然「きみはコトちゃんと違ってあんまり頭良くないし下手したら二浪だよ? さすがにそれは可哀想だからあたしが教えをさずけよう。安心しなってサービス料金だから。時給三千円。格安でしょ」といいだした先生の厚意によって、巻島家はゴールデンウィークが明けたあたりからまたしばらく家庭教師を雇う運びとなった。

「――でも、なんで出てこないのかしらね、お母さん」
「さあ」

 僕は肩をすくめる。先生とするこの話題は新鮮だったが、あいにくと僕の中ではその問いそのものが古びれている。そんな疑問はこの二年間で売って余って腐るほど繰り返したのだ。

「きみは気にならないの? お母さんのことなのに」
「気にはなるけど誰も教えてくれませんし。だいたい二年もすれば慣れるってのが大きいかな」
「慣れちゃうってのも凄い話だぁね。それにしても二年かー。ってことはあたしが来る一年前からか。その前はふつうに暮らしてたわけ? ふつうっていうのは――その、部屋に閉じこもってなかった、って意味でね」
「いや、二年っていうのは僕がこの家に来てからの数えなんで。実際はもっと前から閉じこもってるんじゃないですか」
「あれ?」と先生が首を傾げる。「……ああそっか。お父さんとお母さんって再婚なんだっけ。うっかりしてた。じゃあ再婚してきみがこのお家に来たのが二年前ってことね」
「そうですよ」僕は頷く。「言ってませんでしたっけ」
「聞いた気はするけど、あんまり突っ込んだことは話せなかったからねえ。コトちゃんが一緒だったし」

 あたし嫌われてたから、とあっけらかんと笑う先生の神経が僕にはよくわからない。だが妹の神経がわかるわけでもない。だからとりあえず「感謝はしてると思いますよ」とだけ言っておくことにした。「先生のおかげで高校も受かったんだし」

「まあ」先生は苦笑する。「……やっぱり行ってないけどね」

 その通りだった。新学期が始まってからじき二ヶ月だが、妹は入学式も含めてせっかく合格した高校に一日たりとも足を運んでいない。買った制服をたまに着て僕に見せびらかしに来たりはするが、それだけだ。妹の中には高校に通う必要性も必然性もまるで存在していないらしい。きっと自分の『城』を作るのに忙しいんだろう。

 だが、先生にしてみれば妹は一年間かかりきりに近い状態で手塩にかけた生徒だ。そう割り切れたものではないのかもしれない。

「それは妹の問題でしょ。先生はべつにカウンセラーじゃないし。完膚なきまでに不登校のあいつを高校に合格させただけでそりゃ立派な事じゃないんですか」
「冷たいよきみは。クールすぎ」冷め切った缶紅茶をすすって、先生は呟いた。年寄り臭い仕草だった。「……この紅茶みてーだね。だからお母さんのこともあまり気にならないの? コトちゃんに深く事情を訊こうとも思わないの? 血は繋がってなくても家族なのに。ひょっとしてそういうのが格好いいとか思ってる?」

 とても数ヶ月前『ネズの木』の話とマザーグースの唄を合わせて唄って妹を本気で怒らせた人物の物言いには思えなかったが、恐らくその場の勢いで喋っているのだろう。

「格好いいとかは思ってませんよ。でも――家族っていってもぜんぶ納得づくでそうなったわけじゃないし。心配するとかしないとか以前の問題じゃないですか」

 先生の顔にからかいの色が浮かんだ。

「ひょっとしてユルギくんってファザコン? お父さんの結婚が悔しかったクチ?」
「だからそれ以前だってのに」妙な方向に話題が来てしまっているが、僕としてはとにかく気を紛らわせることができればいい。机の上に投げ出していたシャーペンを手にとって、くるりと回して見せた。「だって親父が僕と兄貴に結婚すること話したの、もう母さんと籍入れたあとだったんですよ? 普通怒るでしょ」
「……あれ?」先生が眉をひそめて首を傾げた。「それ、『結婚する』ことじゃなくて、『結婚した』ことの報告って言わない?」
「いいますね」僕は頷く。当時のことを思い出して少し語気が乱れた。「事後報告。年賀状じゃあるまいし。学校から帰ってきたらいきなりファミレスに呼び出されて。行ってみたらそこに――ミコトがいて」
「そこで言われたの、結婚する――したって? ファミレスで?」
「ファミレスで」

 それはそれは、と先生が感心する。

「お母さんは?」
「いませんよ。当然」
「当然なんだ……」
「もちろんそのときは当然じゃなかったですよ。兄貴なんかマジギレでしたね。途中で帰ったくらいで」

 シャーペンのノブをノックしながら思い出す。あのときのことは今でも意外と鮮明に記憶を手繰ることができた。二人で呼ばれていった|ファミリー《・・・・・》|レストラン。親父の隣に座っていた女の子。いかにも大人しそうで、僕が始めてみるタイプの人間だった。フリルが似合いそうだと思ったのをおぼえている。じっさいにはそんなもの着ていなかったが。

 妹は――清潔な印象の中学の制服に身を包んだ巻島ミコトは、おそらく親父が勝手に注文したのだろうクリームソーダを前に、ただじっとしていた。長いまつげが印象深かった。そしてたどたどしい様子の自己紹介のあと、親父は唐突に――

〝この子は、お前らの腹違いの妹になる〟

「うっわー」先生が大げさな手振りで驚きを示した。「ドラマみたい。じゃあなに。義理じゃなくて、ひょっとして前の――ユルギくんの実のお母さんと一緒のときの……が、コトちゃん?」
「いや、違いますよ。僕たちの母親は僕が生まれてすぐ死んでるそうなんで」それにしたって事実を確認したわけではないが、疑ってもあまり意味のないことだ。「だから――ミコトの年齢的に、母さんと、|今の《・・》|母さんとできたのはそのさらに一年くらい後ですね。たぶん。でも親父はミコトのこと、産まれたことさえ知らなかったらしいです」
「ふーん。お父さん、お盛んだねえ。それで、えっと、二年前にお母さんと再会して――よりが戻ったってこと?」
「じゃないですかね」僕は曖昧に頷いた。「詳しいことはよく知らないですけど、なにもかも僕たちは後手後手で。そのあとはもうほとんど流されたって感じでした、僕は。怒った兄貴を追っかけて親父は僕とミコトをそこに置いていきやがったし」
「お兄さん、生真面目そうだもんねえ」納得だというふうに先生が何度も首肯する。「あたしの性格も許せないみたいだし、そんなことになったら冗談抜きで激怒しそうだわ」
「ナイーブなんですよ。今内定取れなくて焦ってるし、もともと親父がああだから責任感も――」迂闊さに舌打ちしたくなる。兄貴のことを考えたくなくて始めた雑談だというのに、話題がそうなっては本末転倒だ。「まあ、そんなこんなで僕はちょっと色々ミコトと話して、」

 お兄さんって呼んでも――

 これもまた考えたくない話題。顔が歪むのをこらえるのが精一杯だった。胸が詰まる。吐き気をこらえる。先生に訝れないうちに、留まった息を吐き出した。

「――話して、例のアレです」
「魔女発言?」
「そう」目を閉じて記憶をまさぐる。ここまで来ると思い出はひどく混沌としている。結局その場に戻ってきた親父と兄貴、そして巻島ミコトと一緒に僕は初めてこの家にやってきて、「で、親父も『母さんは部屋から出られない』とか言い出したんですよ」
「成る程。お父さんは了解済みだったってことか。当たり前ね、結婚するくらいなんだから。……じゃあ、お兄さんは? 納得するの大変だったんじゃない?」
「というより、納得は今もしてませんね」早く兄貴の話題は打ち切りたい。僕は口早に答えた。「隔意っていうのかな、だから今でもそういうのはあるし、母さんの飯も兄貴は基本的に用意しないし。親父のやり口がどう考えたって悪かったから無理ないとは思いますが」
「あたしにはなんとも言えないかもしれないけど」先生も呆れ顔だった。「たしかに無理もない気はするかな、さすがにそれは――と、」

 そこで先生の腕時計がアラームを奏でる。授業開始から三時間が経ったのだ。

「時間ですね」実際には三十分前に授業は終わっていたが、それでもこうして一区切りがつくと肩から力が抜ける。僕はふっと息をついた。「お疲れさまでした」
「はい、お疲れさまー」

 先生も軽く答えて、まだ手の中にあった缶紅茶の残りを一気にあおる。妹ほどではない白い喉が僕の前にさらされた。

「それじゃ、あたしは帰るわ」
「晩ご飯は食っていかないんですか?」

 食費も馬鹿にならない、と常々こぼしている先生は、親父の勧めるまま我が家の食卓に相伴することも多い。さてはとうとう彼氏でもできたのかと勘繰っていると、意外な言葉が返ってきた。

「いや、来たときはそのつもりだったけどさ。今の話聞いたあとだとさすがにやりづらいというか。ちょっと突っ込みすぎちゃったなーって」

 そんなデリカシーが先生にもあったのかと思いながら、僕は首を傾げる。

「はあ。でも僕が好きで話したことだし」
「それよ」教材をショルダーバッグに押し込みながら先生が言った。「なんか今日のきみはガードがゆるい。全下げ感漂ってる。――ねえ、ひょっとしてなんかあった?」
 答えに迷ったのは一瞬だけだった。
「――なんで、そう思うんです?」

 先生は頬を掻いて、

「なんでってこともないけど。いつもより口数が多いし、いきなり家族のお話振ってくるし」
「緊張してたんですよ、最初の授業だから」

 僕の答えはどんどんはぐらかす方向へと進んでいく。不思議なものだった。ついさっきまでは先生に言うべきかどうか悩んでいたことを、今の僕は絶対に話すべきではないと判断している。どうしてだろうか? 何か理由があるんだろうか? そうではないだろう。僕はおそらく最初からなんとなくわかっていたのだ。僕が今抱えているものは、先生に話したところでどうにもならないものだ、と。

「そう? ならいいけど」知ってか知らずか、先生はあっさり引き下がる。先生のこういうところが僕は好きだ。「じゃあ気が向いたら相談でもなんでもしなさいな。家庭教師は生徒の上から下まできっちりケアするのが仕事だからね」
「はいはい、そのときはお願いしますよ。ちゃんと」

 軽口を叩きあいながら部屋を出る。と――
 兄貴が階段を上ってきたところに鉢合わせした。

「あら、こんばんは」

 軽い調子で挨拶する先生を一瞥して、兄貴は小声で「どうも」という。それきり何も言おうとはせずに、先生とすれ違って僕の前で立ち止まった。

「よう、――お帰り」

 頬の筋肉がこわばるのを自覚した。不自然な声になってはいないか。嫌悪感を漏らしてはいないか。僕はちゃんと兄貴の目を真っ直ぐに見られているか。明かりが消えたままの廊下で兄貴と向かい合って立っていると、僕は平静でいられそうになくなる。拳は震えていないか? 疑問がさざめいて渦を為す。渦中にあるのはひとつの黒い記憶だった。三日前から僕の中に大きすぎる影を落としている、思い出すのにも抵抗を感じる、あの光景。
 兄貴がひからびた声で答えた。

「……ああ、ただいま。おまえは勉強か?」

 リクルートスーツの上着を脱いだ兄貴の姿は、目の錯覚かそれとも暗さのせいか、年齢よりもはるかに年経て見える。くたびれている。下手をすれば、親父よりも。なまじ顔立ちがそっくりなだけに、いっそう明確に疲労の度合いを感じとることができた。

「うん。兄貴は就活だろ。どう? 内定とれそう?」
「さあな」兄貴の唇が曲がった。笑おうとしたのだと思った。「どうせ今度もだめだろ。高望みしすぎなんだ、俺は。たいしていい学校を出られたわけでもねえのにな」

 自分を笑う表情は相変わらず歪んだままだ。僕はそろそろこの場にいるのが辛くなってくる。兄貴と顔を合わせていると自分が何を口にしてしまうかわからない。

「まあ、加減してくれよ。僕なんか兄貴よりずっとごくつぶしだけど、親父も大丈夫だって言ってるし」
「俺たちの金じゃねえけどな」兄貴が息を落とした。「おまえはせいぜい、しっかりやれ」

 言われなくてもそうするつもりだ。僕は兄貴から顔を背ける。「それじゃ、僕は先生のこと送ってくるから」
「え?」蚊屋の外にいた先生が声を上げた。「いや、べつに要らないよ」
「そうですか?」それならそれで構わない。さっさと部屋に戻ればいいだけだ。僕はとにかく、兄貴のそばにいたくない。
 先生が頷く。「うん。それじゃ帰るね。またあさって――」
「ちょっと待て」

 先生の言葉を遮ったのは兄貴だった。不思議そうにこちらを――兄貴を見返す先生には目を向けないままで、兄貴が僕に言う。

「やるんなら受験勉強だけしてろ。家のことを――どこの誰かもわかんねえような女にべらべら喋るな」それからようやく先生に視線を投げて、「あんたもだよ。興味本位で人の家の事情に入ってくるな。ただの家庭教師だろ。金だけもらって満足してろ」

 少しの間、兄貴が何を言っているのか理解できなかった。先生も同じだろう。攻撃的な目つきの兄貴を前に、ただ目を丸くしている。

「いきなり――何言ってるんだよ」やっとのことで絞り出した声もまた、状況に追いついていない。「盗み聞きしてたのか? それに失礼だろ。もう一年も家に来てて、妹――ミコトだって、先生のおかげで高校受かったのに」
「どうせ行かない高校にか? 意味ねえだろ、そんなもん」

 嘲笑が答えだった。僕は唖然とする。それは僕の知らない兄貴だった。今まで一度も見たことがない、見たいとも思わない兄貴だ。

 もちろん――男兄弟だ、深刻な喧嘩がなかったはずはない。殴りあったことだってある。にもかかわらず、兄貴がこうまで醜い表情を形づくれることを、僕は今初めて知った。あるいは闇の加減が見せている錯覚なのか? その可能性もある。だが、兄貴が吐いている言葉までもが幻だという可能性はない

「あいつの受験なんてうちの恥を広げただけだったろ、結局。みっともねえ――」

 ――みっともない?
 先生のことが気の毒だったわけではない。その言葉を僕の聴覚が受け取った瞬間に化学反応が起きる。みっともない? 恥ずかしいってことか。連鎖的に思考は広がっていって僕の体を振るわせる。歯の根がずれた。顎に力がこもる。眼球が映すのは目の前にいる兄貴ではない。三日前僕のベッドに放置されていたテープの中に映っていた兄貴だ。吐き気が僕を揺さぶろうとする。嫌悪を兄貴に叩き付けそうになる。自制する理由はそう多くなかった。ただこの場には先生がいた。先生さえいなければ――今すぐにでも兄貴を問いただしてやれるのに。もどかしい。今にも僕は声を上げそうになる。胸をかきみだすどうしようもなく気分の悪いあの映像の真偽を、この場で吐き捨てたくなる。
 それを制したのは先生の声だった。

「恥かどうかなんてあなたが決めることじゃないでしょ、就職浪人さん」

 今度は兄貴が黙る番だった。

「前からスカしてて気に入らないガキだと思ってたけどね。ちょっと弟のかわいげを見習えこのバカ。ぐだぐだうっさい」

 兄貴と同質のあざけりは、兄貴のそれよりはまだ柔らかく、より激しい。だがどちらにしろ嘲笑には変わりない。これも僕が初めて見る表情。先生は怒っていた。

「家のことに関してはたしかに他人のあたしには関係無いわよ。コトちゃんのこともそう。結局不登校のままなのは――まああたしに関係あるとは思ってないけど、気にはしてる。でもそれがなんなの? ただちょっと変わった手順で家族が増えただけでしょ。ただ学校行ってないだけじゃない。何がみっともないって、内定のひとつも決められないでストレス溜め込んだ挙句それを他人に発散する馬鹿がいちばんみっともないに決まってる」
「ちょ、先生、落ち着いて」

 自分の不快感も忘れて僕は焦る。先生が言われっぱなしでいるはずがないとは思っていたが、ここまで大人気ない反応をするとは思わなかった。笑顔に皮肉の一つでも置いてあっさりかわすとばかり思っていたのに――もしこれで取っ組み合いにでもなったら一大事だ。
 なんとか先生を止めようと声を上げかけると、

「だいじょうぶ」先生が先んじて言った。「落ち着いてるわ。ケンカなんかしないわよ。きみを合格させるって決めたしね、馘首になるわけにはいかないし」
「――あ、はい。それはどうも、ありがとうございます」

 安堵半分驚き半分で頭を下げると、背後から扉が閉まる音が聞こえた。

「あ、」

 振り返ってみると、やはりそこにもう兄貴はいない。
 先生の舌打ちが聞こえた。

「――逃げられた」

 その呟きには苦笑いするしかない。平和主義だとはもちろん思っていなかったが、先生がこうまで好戦的だというのも予想外だった。あるいは今のは、業務時間外の言葉なのかもしれない。

 余熱を鼻息で逃がそうとする先生を後ろにおいて、僕は暗い廊下の奥を透かし見る。突き当たりの先には母さんの部屋がある。母さんは今の騒動も聴いていたんだろうか?
 聴いていたとするなら、母さんは先生のことをどう思っただろう。

 その日、兄貴はもう部屋から出てこなかった。



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[ 2005/12/24 01:08 ] 家族のⅠ | TB(0) | CM(0)
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