インクナブラ

 主に創作小説を掲載します。

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夜明けのエディプス・1 


題名  「夜明けのエディプス」
ジャンル 精神劇的チャンバラ

注意   全編通して陰鬱な雰囲気です。

 必要かどうかは知らないけど粗筋など書いてみると、鬱屈した主人公が血気に逸るだけの話です。なんじゃそりゃァ!
 と思った方はちょっと読んでみてもいいやも。
 ちなみに「志束」は<シヅカ>、「彼子」は<カノコ>と読む。(露骨に予防線)





 祖父は辻斬りらしい。



   ‡‡‡



 何の光明も見出せないその夜の中で目ざめた僕がまず思ったのは、やっぱり祖父のことだった。祖父はどこだろう?、と僕は思う。ちょっとした眠りのあとだって、認識が再開されて僕が僕の世界に自覚的になるたび、いつだって同じことを思う。

 祖父はどこだろう?

 こういうときの僕は、鉦の音を聴くたびに食欲を刺激されるようにしつけられた犬に、とてもよく似ていた。目ざめは痛みの始まりを告げる鉦なのだ。そして目ざめのあとにやってくるのは痛みと同義の一日。それが何年も何年も繰り返されて、ついには餌ではなく鉦の音に胃袋を刺激されるようになってしまった犬と同じように、僕の目ざめにも痛みがついてくるようになった。

 だから僕は毎朝一度、古傷の痛みを味合わなければいけない。そして思うのだ。祖父はどこだろう、と。長く育てられた僕の中の怯えと不安が、僕にその疑問を忘れることを許さないから。
 色は似ていても、毎朝に僕の胸の戸を叩くこの怯えと不安が向けられる場所は、それぞれ正反対だった。つまり、祖父がいることに対する怯え、そして、祖父がいないことに対する不安だ。いつだって僕を痛めつけてきた祖父の暴力を僕は恐れ、だけど僕が祖父に対して何らの答えも出さないうちにそれが消えてしまうことを怖れる。

 だけどそのふたつが天秤の上でつり合っているのは覚醒のあと、ほんの一時にすぎない。目ざめを経て一日の始まりを認識すれば、均衡なんて保たれることもなく天秤は一方へ傾いてしまう。つまり、僕は痛みだけを怖れるようになってしまう。あたりまえのことだった。誰もが誰も、頭に降りかかってくる木刀を目の前にして勇気を保ちつづけることができるなら、そもそも勇者が称えられることはないんだから。

 けれど、この夜はちがっていた。

 だから、僕が今感じているのはこれまでに経験のないたぐいの恐怖、不安だった。落ちつかず、苛立って、僕は焦りにじりじりと神経を焦がされる。不快だった。秤は……もちろん実際にそんなものがあるわけじゃないけど、僕は恐怖に背中を押されて呟く。秤は……そこにかけられていた二つは、どこに消えた?

 祖父はどこに消えた?

 僕は思い出せない。だから苦しい。記憶は虫に食われたようにところどころ欠落していて、はっきりとしない。僕はどうしてここにいるのか。今がいつなのか。そして、どうして、――

 どうしてこんなにも、今の僕はからっぽなのか?

 その真新しい、だけど黒ずんだ疑問に衝き動かされて、僕は歩き出す。焼けるようではなくて、蝕むような暑さをはらんだ闇の中を歩き出す。真っ暗な部屋を脱け出て、僕を押し潰しそうなくらい狭い廊下を抜けて、何の当てどもなく屋敷を歩き出す。
 右手に一振りの刀を提げて。

 この夜の中で、辻斬りと殺しあうために、僕はここから出て行く。



   ‡‡‡



 油蝉の夏をうたう声は刃物が軋る音にどこか似ている。声だけでしかとらえられない夏の虫の姿を思い浮かべながら、僕はバケツに汲んだ水を柄杓で門前に撒いて、早くも額ににじみだした汗をぬぐった。

 今日も暑い。

 夏休みに入ったところで、突然予定表が埋め尽くされるわけじゃ、もちろんない。朝起きてまず自分の分だけの朝げを準備して、その後に祖父が部屋に戻っているかどうかを確認すれば、とたんに僕は暇になる。だから両親が家を出ていくのを見計らって水撒きをしていることにも、涼をとるのと時間をつぶすこと以上の意味はなかった。

 欠けたバケツのふちに囲まれた水鏡、その青色の水面に歪んだ僕の像を見る。ゆらゆらと動いて一定しない僕の顔からは、いつもと変わらず表情が抜け落ちていた。

 その像をかきけすように柄杓をつっこんで水を汲み、空に広げるようにして水を撒く。

 ぱっと水の華は大気に散ってきらきらと輝き、手の届く場所に一瞬だけ虹をつくりだした。まさか触ろうとしたりはしない。僕は消えていく虹を見送る。と、広がった水滴が乱反射する陽光が目を焼いて、僕は少し目を細めて額の上に手をかざした。
 目が回りそうなくらい眩しい。僕はその光に晒されつづけているスニーカーの下の地面を思う。

 まだ太陽が昇ってから数時間だっていうのに、充分に熱されたアスファルトは、さすがにかけた水を一瞬で蒸発させはしないけど、素手で触れれば火傷する程度には熱い。地面というのは思っている以上に熱をためこむものだし、吸水性も高い。だからこんな暑い日にはちょっと水をかけた程度じゃ、湿り気はあっという間に空へ返ってしまうのだった。

 だから僕は水を撒きつづける。一定の拍子を刻みながらバケツの水を柄杓で汲みとって、足下に、門の向こうに、頭の上に撒き散らす。
 少しの間だけ立ち昇る涼気を、そして辻の向こうでゆらめいている陽炎を目にしながら、僕は少しだけ憂いのまじったため息を吐いた。今日から妹が帰省するのだ。そして父がいつもより早く家を出た理由も、駅で待っている妹とその友人を迎えに行くためだった。

 妹のことが苦手というわけではないし、もちろんまったくの他人に比べれば気安い相手なのだけど、だからといって得意にしているわけでもない。端的に言ってしまえば、僕は妹の無神経なところがうとましいのだった。僕とは違い、早くから全寮制の学校に入れられてこの屋敷と祖父から遠ざけられている妹と、生まれたときから祖父につけられている僕との間には、どうしようもなく深い溝が長々と横たわっている。それはもう埋められない溝だ。何をどうやったって、橋をかけるだけならともかく、溝を乗り越えて僕と妹が分かり合うことは、ぜったいにない。それは判りきっている。

 なのに、その認識が一方通行なのが、いちばんの面倒ごとだった。妹は僕にわかることがわからないのだ。そして僕も、妹の言うことがわからないのだ。僕の世界は祖父だけで手一杯だっていうのに、妹は何でもないように溝を飛び越えられるつもりでいる。認識がすれ違うだけの近しい他人というのは、僕が一番かかわりたくない人種だった。だけど、近しいのだからかかわらないわけにもいかない。それが僕にため息をつかせる。

 そして陽炎の向こう、毒々しいくらい青い空と重たそうな雲の下、伸びている道路を通り黒塗りの国産車がやってくるのを見てとって、僕はつこうとしたため息を呑みこむ。

 父の車だ。

 陽炎を泳いでやってくる自動車。ろくに洗車もされていない車体には、ところどころ汚れがこびりついていた。黒い色についた白い汚れは、とても目立つ。だけど父は特別必要に迫らない限り、汚れを落とさない。どこかでついてしまった傷も消さない。つまり父は、そういう人間だった。

 見た目の汚さとは対照的に軽快な動きで車は門の前、僕のところまでやってきて、音もなく停止する。だけど運転席でハンドルを握る父は僕に一瞥もよこさず、僕と父をへだてるパワーウインドウが降りることもない。それも、よくあることだった。つまりそれが、僕と父の距離なのだ。

 そのかわりに動きがあったのは後部座席だった。

「出迎え?」

 顔よりもまずその弾みそうな声が僕の耳に届いて、やや遅れて開かれた扉からすらっとした長い足が伸びる。窮屈そうに身をかがめながら車から降りて僕の目の前に立ったのは、面倒のもとである妹だった。

「ひさしぶり。ただいま」
「うん、おかえりなさい」

 手を上げて近づいてくる妹を見上げながら、僕も応える。妹の背は僕よりも頭一つ、二十センチ近く高い。顔立ちもあまり似てはいない。だからもし並んで歩いているところを他人が見たなら、まず間違いなく僕のほうを年下と見るだろう。といっても、一緒に歩いたことなんてないのだけど。
 そしてこれからもないだろうな、と思いながら、僕は視線をわずかにそらして妹の向こうに広がる空を見る。誰かと目を合わせるのは苦手なのだ。

「ずいぶん急だよね。いつもならお盆まで帰ってこないのに」

 ああそれね、と妹は頬をかきながら首をかしげた。

「まあね。夏休み中に寮を改装するってことでみんな強制送還なの。そういうことだから、邪魔かも知れないけど今年はごめんして」
「別に。邪魔とかじゃないけど。ここは志束(シヅカ)の家だし」

 邪魔だけど、と思いながらそう言って、僕は居心地の悪い思いにとらわれる。それから、やっぱり僕は妹が苦手なのかもしれない、と認識を改めた。妹は僕とは河をはさんだ場所にいる人間だ。そして僕は向こう側にいる妹のことなんてまったくわからないのに、妹のほうは彼岸からでも僕を観察できる鋭さを持っている。あるいは、と僕は思った。その鋭さが、妹を勘違いさせている原因なのかもしれない。
 だからといって目の前でため息をつくわけにもいかない。僕だってそのくらいのことは心得ている。
 と、妹の背後、後部座席から大きなボストンバッグを持ってよたよたと歩み出てきた女の子を眼にとめて、僕は首をかしげた。

「その子がともだち?」
「え? あ、そうそう。友だち。阿坂彼子っていうの。ほら彼子、挨拶して挨拶」

 妹の声に急かされて、彼子、と呼ばれた女の子が重たそうに荷物を抱えながらこちらに歩いてくる。高すぎるくらい背が高く体育会系然とした妹とは正反対に、その女の子は小柄で大人しそうだったけど、特に意外ではなかった。僕もそれほど詳しく知っているわけではないけど、妹が付き合う友人というのはだいたい似たような傾向をもっていて、みんな彼女のように大人しそうなタイプなのだ。
 妹と同じ制服の女の子は荷物を地面に置くと、折り目ただしく僕に一礼して、「おひさしぶりです」と言った。

「ごぶさたでした、先輩。お元気そうでよかったです」
「は?」

 僕はその挨拶に面食らって、目をしばたかせた。『おひさしぶりです』と頭の中だけで反復する。僕の辞書に誤謬があるのでなければ、それは久闊を叙す挨拶だ。
 だけど僕は目の前の彼女にてんで見覚えがない。

「えっと……」

 しどろもどろに応対しながら、どこかで会っただろうか、と僕は自問した。とくべつ良い記憶力を自負することはしないけど、知り合いをあっさりと忘れるほどその方面の社会性が欠如しているつもりもない。もしそうなら、僕のプロフィールにはまたひとつ短所が書き足されることになるのだけど、やっぱり僕は僕を『先輩』と呼ぶ女の子に心当たりなんてなかった。
 そもそも僕は中高と部活動とは無縁の生活を送ってきたし、それ以外で学年を別にする親しい関係というのはあまり作れない。とぼしい学校生活の想い出を振り返ってみても、彼女の肖像はどこにも見出せないのだ。
 だけど彼女は僕を知っているらしい。そういう不整合は、僕を少しだけ不快にさせる。
 困惑している僕を認めて、彼女――阿坂さんは得心したように頷くと、柔らかく微笑んだ。

「ごめんなさい。――ならはじめまして。志束さんの友人で阿坂彼子といいます」
「……うん、はじめまして」

 とりあえず返事はするけど、〝なら〟と言われたところですでに芽生えた違和感をぬぐいされるわけはない。僕は呆れた顔でこちらを見ている妹に視線を送って、どういうことかと目配せする。
 〝さあ〟と両手をあげて肩をすくめる仕草が、妹の答えだった。

「あたしが訊いても教えてくんないしさ。彼子中学だけこっちに通ってたらしいから、そのとき伊吹のことどっかで見たんじゃない?」
「そうなの?」

 と、僕は阿坂さんに水を向ける。だけど彼女は「はい」と頷くだけで、それ以上を語ろうとはしなかった。

「まあそれはそれとしてさ、」

 うんざりした眼を空に向けて手で胸元をあおぎながら、妹が腰の落ち着かない空気を両断する。「いいかげん家に入ろうよ。荷物も置かなきゃいけないし、この炎天下いつまでも立ちんぼしてたら熱中症になる」
 うん、と阿坂さんが頷いてその提案に同意した。「志束は頭の位置が太陽に近いしね」

「そうそう。あんまり日にあたってると溶けちゃうんだ。あたしロウで出来てるからさ」と妹。「だから溶けないうちに避難ね。――っと、そうだ。伊吹、あんたも来なさいよ」

 二人の会話をよそに水撒きを再開しようとしていた僕は、そのせりふを聞いて妹を見返した。反射的に「嫌だよ」といいそうになるのをこらえながら。

「なんで僕も?」
「なんでもなにも、」と妹は鼻を鳴らしながら答える。「せっかく帰郷したんだから接待してよ。『邪魔じゃない』んでしょ?」
「いや、僕は――」言いかけたその言葉を、

「志束」

 沈黙を破った父の声がさえぎった。いきおい僕たち三人の視線は駆動音を発している車に、その運転席に向けられる。ぎらついた陽射しでも照らしきれない影のかたまりみたいな車の中、パワーウインドウを半分だけ開けて顔を覗かせた父は、僕には視線を向けないまま、陰気な眼で妹を見ていた。

「そいつには親父の世話があるんだ。あまりわがままを言うな」

 父の声は祖父のそれによく似ている。だからかどうかは知らないけど、父の声が響いた瞬間だけ、必死になってわめいていたはずの蝉さえ、その口をつぐんだ気がした。妹はすぐに何かを言い返そうとするけど、緞帳を落としたみたいに重い父の口調は断定的で、反論を封じる効果さえあるようだった。
 少しの間をはさんで、妹が僕をうかがう。

「伊吹?」
「…ま、そういうこと」

 僕も父のほうを見ないままにそう受けて、肩をすくめてそう答えた。

「友だちも――阿坂さんも来てるんだしさ、誰かはお祖父さんのこと看ておかなきゃならないんだよ、どっちにしたって」
「そんなの。子供じゃないんだからさ、」

「同じだよ」言葉を募らせる妹に苛立ちをおぼえながら、僕は言い切る。さっそくだ、と思った。妹のこういうところは、僕をひどく苛立たせる。父がこの場にいるのも良くない。波立つ感情の水面に自制を言い聞かせながら、僕は妹に噛んで含ませるような視線を送った。

「今のお祖父さんは、子供と変わらないんだよ。わかるだろ? あぶないんだ」

 危ないんだよ、と僕は思う。まだ誰にも見つかってはいないけど、夜中に胴田貫をかついで徘徊する祖父を形容する言葉はそれ以外にちょっと思いつかない。
 沈黙が場に落ちて、耳に届くのは蝉の声と、そしてだいぶ前にはるか上空を横切った飛行機の風鳴りの音だけになる。僕は手の中で柄杓をもてあそびながら、あくまで何かいいたげな妹を見つめていた。
 見つめているうちに、なんのことわりもなく父の車は走り出して、陽炎の向こうに消える。阿坂さんは車を見送りながら丁寧に辞儀して、僕と妹に向き直った。

「とりあえず、お邪魔してよろしいですか?」
 場を取り直すようなその態度に、僕は少し感心した。
「そうしよう」

 ありがたくその提案に乗ることにする。これ以上、無駄な問答で神経をすり減らしたくはなかった。僕には余裕がないのだ。最近は、特に。だから僕は阿坂さんに頷いてみせて、バケツの中に余っていた水をすべて門の前に流した。一時で乾ききることを運命付けられた河が、埃のつもった地面に流れて、その色を変えた。
 その水たまりを妹のローファーが踏みつけて、ばしゃりと水滴が跳ねた。

「相変わらず祖父さん祖父さんなわけだ、伊吹は」

 こいつ殺そうかな、と僕は思った。
 だけどそういうわけにもいかない。思わず奥歯を噛みしめた僕は妹を見上げて睨み付けそうになるのをなんとか堪えた。よくもまあ、と憤激を逃がしながら、僕は胸中でそっと呟く。これだけ的確に地雷を踏んでくれるんだ、こいつは。

「…なんだよ。今年はずいぶんしつこいじゃない」
「しつこくもなるよそりゃあ!」ここで初めて、妹は声をあらげた。もともと気が長いほうではないのだから、よくもっていた方かも知れない。
「聞いたんだよ? 伊吹ろっ骨折ったって言うじゃない。わかってんの? 骨折だよ骨折。それもあばら。そりゃむかしから祖父さんはああだったかもしれないけどさ、へたすれば命に関わるんだもん、そんなの放っておけるわけないで、」
「放っておいてよ」

 我ながらずいぶん冷たいと思う声が、妹の声をさえぎって口から自動的にすべり落ちた。せっかくうまく折り合えていた胸の中の鬱屈が、一端吹き出してしまいそうになる。それは嘔吐をこらえる感覚によく似ていた。吐き出してしまえば楽になる。それはわかっている。だけどどうにもそうするわけには行かないのだ。
 だから、妹を見ながらも意識はどこか遠くに逸らしておくことにする。酔ったときに遠景を見ることで三半規管に平衡をとり戻すように、僕は心の焦点を遠くに結ぶ。妹よりも不快なもの、妹の言葉よりも痛いものを追想する。
 たとえば片腕のない父を。たとえば祖父といやらしく交わっていた母を、鮮明に思い浮かべる。その吐き気は、しかし目の前の妹に対する衝動を落ち着かせてくれるのだ。

「志束はさ、良かれと思ってそう言ってるんだろうけど」

 呼吸を整えるように、言葉を区切る。真正面から見据えると、妹はひるんだように顔をそらした。

「勘違いしないでよ。僕は志束を守ってきたわけでもないし、その代わりに志束に守ってほしいなんてこれっぽっちも思ってないんだ。お祖父さんとのことは僕の問題だし、志束には関係無いことなんだよ、ほんとに。志束がそこにいるのは、べつに僕のおかげでもなんでもないんだ」

「だから放っておいてほしい」と言い切って、僕は妹に背を向けた。門の内側に足を踏み入れて、陽射しから隠れたその場所で、肩越しに屋敷の外にいる妹と、困ったまま立ちすくんでいる阿坂さんを肩越しに振り返る。

「上がれば?」

 じわりと、蝉が鳴いた。古傷の痛みに、どこか似た声で。


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[ 2005/12/17 22:49 ] 夜明けのO | TB(0) | CM(0)
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