インクナブラ

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明日なき房総 

 ちょっと私生活が洒落にならないことになってきました。どきどき(動悸・息切れ)。
 侵食削っても書く時間だけは確保する人生を標榜するものですが、いったいどうなってしまうのか。

 あーうちにエルフの嫁が来ねえかな! 別にツンデレじゃなくてもいいから!
 と思ってたらむかしエルフをテーマに書いたファンタジーっぽい雑文をHDDから発見したのでお茶を濁すために載せます。

 オチてない上にホントにひでえ話だなこれ。

森のSDR

0.

 エルフたちの集落で麻薬が流行りだした。牙子が生まれるひとむかし前のことだ。森が湿気に満ちるころ花を咲かすその植物が、あるひとりの同胞によって温室設備や精製の知識とともに持ち込まれたのが始まりだった。
 これをきっかけにして、森妖精たちの園は地獄の景観へと塗りかえられた。透明性の液体は、一滴の染みによってさえ回復不可能なまでに汚染されたのだ。理想郷を致命的に濁した禁断の色。それは朱がほの白く化粧した美しい華のかたちをしていた。

 麻薬が持ち込まれるまでにもそれなりの経緯はあった。
 かつて、いまだ人跡届かざる秘境にエルフのうからは棲息していた。もっとも近い場所にいる人間のムラでも山を二つ三つ越えねばならぬところにあり、めったに遠出をしない集落のエルフたちにとってはヒトなど珍獣同然の彼岸のものであった。
 稀に好奇心の強いエルフが迷い込んだ人間の子供をかどわかしては打ち捨てたり遊び半分に育ててみて飽きればやはり棄て殺すといったことはしていたものの、彼らは互いにおおむね良き隣人であったといえよう。人はエルフを山の化生として畏敬していたし、エルフは儚く頭の悪い人を哀れみを持って見つめていた。
 だが俗世で隆盛を極めつつある人間たちとは別に、驕慢なエルフ社会は昨今深刻な問題に直面していた。高齢化と出生率の低下である。
 エルフたちの新生児はせいぜい半世紀にひとり生まれればよいほうであり、これは遠大な寿命に比しても楽観できない少子ぶりだった。彼らの里は外界と親交を絶って久しく、当然新たな血脈も取り入れられず、気の遠くなるような年月を経て四十余名の邑人は余さず血縁関係にあった。
 すこし事情は異なるが、のちに里いちばんのシックファックエアヘッドと呼び習わされる、自称〝稀代のロックンローラー〟エルフ牙子の両親の続き柄も母であり息子でありながら同時に姉と弟でもあるというややこしいものである。そのようなややこしい関係は、特にこの頃里のあちこちで散見できた。
 妖精といえども繁殖のためにはやることをやる必要がある。であれば彼らもまた生態系の一員に他ならない。そしてインセストタブーが棄却された価値観に則すエルフたちはすでに生命として行き詰まりつつあった。
 一目瞭然の奇形や明らかに寿命が短かったり病がちなエルフが増え始めると、さすがにフーコーではないエルフたちも「これはまずいかもしれない」と曖昧に思い始めた。ここでのちの麻薬騒ぎと違い比較的早期に対処できたのは、彼らが彼らの感性に照らし合わせて美しくないものや楽しくないものを大いに嫌ったためだ。
 当時の最老翁が妻エルフに対しこんなことを漏らしたという説話が残っている。

「ああ、ああ、なんということだろう。どうしよう」
「なによ、頭なんか抱えてしまって。どうしたのお父さん」
「おお、おまえか。なあ、わしは良かれと思って子供を増やしてきた。集落でいちばんの子持ちにもなった。同族らしからぬ性豪として誉めそやされ内心得意に思っておった」
「そうねえ。あたしもよく頑張ったわ。この細腰でさ」
「だが生まれたのは病弱か莫迦かかたわの者ばかりだ」

 夫エルフのアナーキーな物言いに、妻エルフは血相を変えた。

「ばかっ。もっと言葉を選びなさいなっ」
「むろんあの子らに罪はない。悪いのはわしら夫婦だ」
「慰謝料の話かしら」
「違う。そういえばおまえも生来足が悪かった。おまえの親もわしらと同じ過ちを犯し、わしらはそれを気付かず繰り返してしまったのだ。なんと因業な。おい、わしは気付いたぞ。このような不幸な出来事を子どもたちにまで繰り返させてはならん。さもなくばエルフの命脈いずれ尽きようぞ」
「ていうか、あたしお父さんの娘だしねえ」

 妻エルフは後妻であり、夫エルフの三番目の娘でもあったのだ。

「そういえばそうだった。こいつはウッカリしていた」
「いやだよ、お父さん。ぼけるにはまだ早い」

 ふたりは通販の司会進行をするアメリカ人のように笑い転げたという。笑った後で、ことの深刻さに顔色を紙のようにした。
 以後、妖精たちのあいだに一過性のモラルが生まれた。それは一種のムーヴメントだった。
 問題が表層化し、ムラを挙げての大騒ぎになった。協議のすえ取り急ぎ下界に降り新たな血を一族に加えるべきだという結論に達した。青年団の中からとくに体の丈夫な男女が六名選ばれ、あるかどうかも定かではないよそエルフの里を探して新たな仲間を勧誘するか、もしそれが叶わなければその連中の子どもを身ごもれという命令がなされた。
 編成された六人のエルフたちの血筋は、みごと大義を果たし帰還した暁には、集落における六氏族として数えることが約束された。名ばかりの称号に心動かされたものはあまりいなかったが、それでも熱狂的な使命感と歓呼の声による後押しは彼らの旅路を明るく照らした。
 そうして彼らは当て所なき遍歴のために安住の地を後にしたのだ。

 六人の男女比は男が四に女が二というもので、女のほうの片割れは牙子の母に当たる。彼女は細身で背の高い金髪碧眼の、常に物憂げな女エルフだった。名はタネ。集落でもっとも見目が良く、またもっとも体が弱く、そしてもっとも性格が破滅的な女である。
 タネは人間と比べれば奇行や気まぐれの目立つ人型妖精のなかでも群を抜いた真性の異常者だった。生まれて六年目に「自分は神だ」と集落の仲間たちに触れ回り、両親を含んだすべてのエルフは自分を崇め奉り一生涯楽しませるべきだと強硬に主張し、まずは年齢の近い子どもから軽く洗脳して自身を聖母とする宗教を立ち上げた。
 もともと、エルフたちは詳しい経緯は忘却したものの「宗教はご法度」という訓戒を持っており、何くれとなく楽観的な彼らもさすがにタネを見咎めた。子どもの遊びにしてもたちや思想が悪すぎる。と、やんわりと掣肘を受けるやいなや、タネは即時表面上の活動を取りやめた。しかしこれは大人たちの目の届かない所で布教を浸透させるための布石に過ぎなかった。タネは自らの思想をアンダーグラウンドへともぐらせ、水面下から徐々に里ぜんたいを侵食しようと謀ったのだ。
 彼女が遍歴のメンバーに加えられたのは、明らかに厄介払いだった。


  ※中略


 たとえ幻想譚にその優美を謳われる存在でも、葉巻を常習的に吹かすようになればりっぱな麻薬中毒者である。神の御手により配置された美貌は、ひがな虚空を向いてはしまりのない笑みを浮かべるだけの面に成り果てた。
 やがて集落にはきな臭い空気が蔓延り始める。異状には薬をやっているものもそうでないものもみな気付いていたが、様子のおかしな家族を不安に思ったところで何も行動を起こしはしなかった。面倒だったからだ。
 さらに悪いことに、薬師の系であったエルフこそが麻薬の育成にもっとも熱心だったことがある。当然のごとく最初に中毒死したのも彼だった。末期には幻覚に翻弄され薬が効かないといっては家人に当り散らし、最後は温室にこもり自家製の花壇に火を放ち一酸化炭素中毒で死んだ。同時に家族もろとも家も焼け、彼が一応は書き留めておいたであろう麻薬中毒患者の治療法も灰になった。集落のエルフ達はあいつは最後まで中毒づくしだったなどといってげらげら笑っており、この期に及んでも危機感を覚えるような感性の持ち主はいなかった。
 長大な寿命を持つエルフの人々は、怠惰を愛し勤労を忌み嫌った。ほんの一部の例外を除いて誰もが刹那主義の快楽主義者で冷笑的であり、皮肉を好んだ。あまりにも永い生とどん底に行き着いた出生率は彼らから活力を奪い、集落にはもはや進歩という概念を覚えているものはいなかった。彼らの輪は人界に比べあまりに娯楽に乏しかった。やることといえば原始的な児戯の延長か酒盛り、でなければ交尾で、ほとんどのエルフはいずれにも飽いていた。その気風が麻薬の跳梁跋扈を許す土壌となったのだ。乾かして刻んで紙で巻いて喫うと気持ちよくなる葉は、牧歌的退廃の徒であるエルフを骨抜きにした。
 長老集は事態を重く見たが、特に対処法を練りはしなかった。いや、できなかったのだ。老人たちはじめに苗の全てを焼き払い一網打尽にしてしまおうと画策したのだが、どこからか荒療治の仔細が洩れて嗅ぎつけたものがちがいた。その報せはたちまちの内に麻薬急進派の若者たちの耳に届いた。彼らは烈火のごとく怒った。息巻いて「そんなことをしたら耳をむしって口に詰め込んだあと首を掻っ捌いて殺す」と生き字引で知られる最老翁を脅し、翁は衝撃の余り心不全を起こしぽっくり逝った。
 残された長老たちは途方にくれ、すっかり肝を潰したのだった。またまさかたかが癖になる程度の葉っぱによって伝統ある妖精郷が壊滅の憂き目に遭いかけるなどとは思わず、賢者たちは「これもよくある若者の暴走、刺激を求めこぞって集落を出て行かれるよりはよい」としてこの暴挙を看過した。
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[ 2007/10/04 21:45 ] 未分類 | TB(1) | CM(0)
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[2007/10/14 09:57] 造園・園芸を語る!


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