インクナブラ

 主に創作小説を掲載します。

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>蒲団 女装オナニー

でたどりついたつわものがいて戦慄した初春の深更。
ヤフーで調べてみたらほんとに当たっちゃってるよぅ! 業が深いですね。
私に蒲団と女装とオナニーを語らせたら凄いことになりますよ。それはもう。でも宣伝コメントがめんどくさくてオナニーって書くとコメント弾かれますからね。みなさん、言論弾圧の急先鋒がここにいます。
最近ようやく中断してる小説再開する時間が取れたのはいいんですがそのとたんにインフルエンスにやられるという体たらく。風邪だったら多少無理は利くんですがインフルエンザだとわれとわが身ばかりの問題でもないので、今週末は養生します。まあいつも休日は引きこもってるんだがな!

そしてなんと、文章に複数(※二つ)の反応が!

>女の子同士のイチャイチャが見られると思ったのに!嘘つき!ところで続きはないのでしょうか?

>倒錯姉弟の斜め上さ加減に激しく笑いました。できれば続きを読みたいです!

珍しく続きキボンヌ(生れて初めてキボンヌって書いた)されたので明日(もう今日)は一日じゅう停滞しているお話の続きを書くサンデイにしたいと思います。 「蒲団」「女装」「オナニー」




「かたい」と女が呟いた。机の木目を目で追っていた沢木少年は不意をつかれて女を見やった。彼の目に映ったのは物憂げな女部長の横顔だった。正面顔より四割増しで美人に見えるその造作に瞬時沢木は見とれてしまう。しかしただちにその後のがっかり感を思い出して気を引き締めた。非合則部活動「文学スノッ部」の部長たる女の妙味はそこにこそあった。
「かたいがね」
「やわい」
「その固いじゃなくて。ふくらはぎ(下腿)でもなくて、田山花袋」
 沢木を見ないまま部長は訂正した。伏せた目元の睫毛は長い。吐き出された人名を沢木は数秒咀嚼した。嚥下するまでに間があった。
「ああ、自然主義の」
 ようよう返した言葉はいかにも芸の無いものだった。沢木はまだまだ単なる読書好き、スノッブ四級の初心者である。知識は未熟であり、厚顔さに含羞があった。半可通ならば即座にぐぐってウィキペディ先生に質問し、斜め読みしてつまみ食いしてあたかもうろ覚えの知識のごとく語ったであろう。よく訓練されたスノビズムの体現者はこの時点で自然主義の発端と論争を半ば語り終えているであろう。沢木はそのどちらにも振り切れていない針であった。無知の知ならぬ無知の恥と過剰な自意識こそ、彼に不足する要素である。
「そう、自然主義の」
 スノビ道のはるか先を行く先駆である女部長は、しかし鸚鵡返しに頷くだけだった。常ならば即座にぺらぺらと聞いてもいないことを聞き取りにくい声で話し出すところである。何かがおかしい。沢木は眉をひそめる。
「田山花袋がどうかしたんですか」
「きのう、『蒲団』を読み終えたのよ。そしたら感想にね、自分語り乙っていうのが最初に浮かんだの。ようはうんざりしちゃったのねあたし。でもこれっておかしなはなしでさ、小説を書くなんて結局は自分を切り売りするようなものじゃない。私小説や自然主義に限らずさ。創作はオナニーだとか言うけれど、それっててんで的外れよ。だったら土佐日記は女装オナニーなの? これがあたし? きれい……おにんにんがおっきっきってまあそれはどうでもいいんだけど、オナニーって基本自由なものらしいじゃない? オナンはともかくそうなってるの。でも本当にそうなのかな。確かに露出することそのものへのカタルシスというのはあるかもしれないけど、仮に公開オナニーをするにせよ、人に見せる以上、それはソロプレイであってひとりよがりではたぶんないのよ。表現が――通信が――ともあれなんらかの点滅が――そこにはある。あたしはそう思う。というここまでのひとくさりが自己完結」
 沢木少年が深く頷いた。
「ああ、ダブルミーニングしてたんですね。急に語り入ったから何かと思った。でも部長、基本なんとか主義なんてものは文系学問につきものじゃないですか。哲学しかり社会学しかり。実存主義しかり構造主義しかり、以前のパラダイムをはねつけることでエポックメイカーとなり、独自に見えて実はミームでしかないトピックを生成していくというそれこそが女装オナニー」
「いいわーその思わせぶりでスノッブ臭をかもし出すテクニカルタームの乱発。でも惜しむらくはそこまで押し出すとかえって底の浅さが露呈してしまうのよね。これをあたしは『本屋でいきなりフレイザーの話題を振ってくるやつは金枝篇の最初二十ページで投げ出す』法則、略して女装オナニーとよんでいる」
「それは既にスノビズムじゃねえ。というかフレイザーに限らねえ」
「『ドグラ・マグラに興味本位で手を出した子は大抵歌で挫折する』法則でも可」
「いや、だってあれ読みにくいじゃないですか……」
 後に読了したものの、ご多分に漏れず沢木少年も一度本を置いた派に属していた。
「だからおまえは四級止まりなのよ。いまだスノビ道の深淵を見つけることさえできていない」
「明らかに底なしの泥沼ですよねそこ」
「深淵といえば最近のイースレイヘタレ過ぎない? しょせん寝取られた男なの?」
「この流れでクレイモアネタを振られて咄嗟に反応できる人がどれほどいるというのか」
「ニーチェの超人思想はスーパーマンの元ネタ」
「すでにスノッブというか雑学になっている……」
「ばかもの、あれこそ正しいスノッブの姿なのよ。だからまずお笑い芸人になりなさい。そしてなんかとにかく十五年くらい芸歴積んで苦労して中堅ポジくらいになりなさい」
「そこだけ取るとほんと険しいですねスノビ道」
 部長は鼻で笑うと、優雅に立ち上がり、室内のホワイトボードへと手首を返した。
「決めたわ。来週の討議のテーマ。『女装オナニーの感想をレポート用紙五枚以上で書き綴れ』」
「これは苦しい」
 これは苦しい。沢木は二度胸中で漏らした。
 こんなふうにして、スノッ部の放課後は消費されていく。
 部員数は、ちなみに三人。男子は沢木一人である――。



 これは苦しい。
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[ 2009/02/08 03:11 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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